リナ・ヴィシュニアウスカイテは、Disciplina としても知られる、リトアニア・ヴィリニュスを拠点に活動するフリーランスのイラストレーターです。ノスタルジックな色彩、幾何学的な形、そしてさりげない象徴 的モチーフを用い、どこか懐かしくも新鮮な世界観を生み出しています。
彼女の作品は国内で幅広く目にすることができます。本の挿絵、建築イベントや音楽フェスティバルのポス ター、ファッションブランドとの継続的なコラボレーションなど多岐にわたります。また、国内外の雑誌で、 エディトリアルや文化関連のイラストレーションも手がけています。
リナの作品には独特の魅力があり、女性らしい柔らかさと、控えめでありながら印象的な色彩、さらに言葉遊びや隠れた意味を忍ばせる遊び心。私たちは彼女の居心地の良いヴィリニュスのホームアトリエを訪れました。




▪️制作プロセスについて教えてください。
基本的に、私はとても自由に制作させてもらっています。最初に与えられるのは、いくつかのキーワードだけ。 その言葉を手がかりに、まるでビーズを一本のネックレスにつなぐように、イメージを組み立てていきます。 そこに自分自身のキーワードも加えながら、視覚的なメタファーを探していきます。 制作はいつも頭の中から始まります。その後スケッチをしますが、これは考えを頭の外に出すための大切な作 業です。そこから、形や色、空気感を探すように、少しずつ彷徨い始めます。
▪️色使いや空気感は、どのような影響を与えていますか。
私の色は、少し時間をまとったような、使い込まれた色です。新しい街よりも、どこか古さを感じる場所に惹 かれます。新しいエリアにいると、少し落ち着かない気持ちになるんです。そうした感覚が、どこかノスタルジッ クな色合いにつながっているのだと思います。 ただ、必ず小さなアクセントは残すようにしています。目立ちすぎるのは好きではなく、素朴で地に足のつい た表現が好きですが、静かな中に、ふと視線を引き寄せる瞬間があってもいいと思っています。全体は穏やかに、 そしてほんの少しの「スプラッシュ」が、作品の核となるアイデアへと導いてくれます。
▪️作品では、意味や感情はどのように編み込まれているのでしょうか。
私は、メッセージを直接的に伝えるよりも、視覚的なメタファーを通して感じ取ってもらうことを大切にしています。
そのほうが、感情として自然に届くと思うからです。あれこれ詰め込みすぎることはしたくありません。メタファーを探し、削ぎ落とし、できるだけシンプルな形にすることで、言葉にしなくても感覚が伝わる状態を目指しています。人物表現についても同じで、特定の誰かを描くというよりは、体験を感じるための「型」のような存在として描いています。大切なのは、そこにある感情です。
▪️具体的な作品を挙げながら、そこで用いられているメタファーについて教えてください。
たとえば《Nida》は、環境と溶け合う可能性を表した作品です。海や自然と一体になり、休息を感じること。
《Friendship》は、自然や太陽と戯れるような「遊び」をテーマにしたメタファーです。
色は、アイデアをシンプルにし、本質的な部分に意識を向けるための大切な要素です。私にとって、人生とは、 記憶をたっぷりと含んだ、ささやかな瞬間の積み重ね。その感覚を、視覚として表現したいと思っています。
▪️制作は直感的なプロセスに見えますが、その一方で難しさを感じることはありますか。
時には、建築の構造やドローイングの中を彷徨うような、遊牧的なプロセスになることもあります。だから こそ、一度離れて、改めて見直し、また戻る時間がとても大切です。
けれど、いつもその時間が取れるわけではありません。そんな時は、今ある構成を受け入れなら、色によっ て軽さを加える方法を探します。 この「彷い」の中で、色の段階がいちばん好きです。最初から色を決めることはありまん。色は、プロ セスの途中で自然と現れてくるものなのです。
▪️なぜジークレー印刷を選んでいるのでしょうか。
ジークレー印刷は、色の深みと強さがまったく違います。顔料インクならではの豊かな発色があり、私にとっては、この 方法以外に考えられません。色の密度は、作品にとって欠かせない要素です。
▪️作品を通して、観る人にどんな体験をしてほしいですか。
たとえ、その場所を知らなくも、世界のどこかに、誰かがその感覚に深く包まれた瞬間があったのだと感じてもらえた ら嬉しいです。環境と溶け合い、そこに「在る」ことを実感する、そんな感覚が伝わればと思っています。
リナ氏の作品はこちらからご覧いただけます。
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